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■彼らは本当に「芸人」だった |
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前回、ぜんじろうさんがお作りになった吉本印天然素材を、ぜんじろうさん自身がクビになってしまった、という哀しいお話を伺いました。今回は、最終的に選抜された6組(ナインティナイン、雨上がり決死隊、バッファロー吾郎、FUJIWARA、チュパチャプス、へびいちご)の素顔について、お訊きしたいのですが。 |
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| ぜん |
「彼らはね、やっぱり別格に優れていましたね。残って当然。地肩が凄い。160キロ投げてました。ダウンタウンさんらの笑いが文科系だとすると、彼らは体育会系でしたね。めっちゃスポーツマンなんですよ。笑いのスポーツマン」 |
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スポーツマンといえば、やはりナインティナインがすぐ頭に浮かぶんですが。 |
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| ぜん |
「彼らはピシッと決めてましたね。『やりたくないことは、やらない』と」 |
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デビュー当時から頑ななポリシーをお持ちだったんですね。 |
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| ぜん |
「ストイックで、気ぃ遣いぃだったですね。6組のなかで一番気ぃ遣いぃやったんやないかな。もともとサッカー部で先輩後輩コンビだっただけに上下関係を重んじる。先輩芸人に対する礼儀はしっかりしていて、後輩芸人はかわいがる。そのかわり『やりたくないことは、やらない』というポリシーがあるから、吉本の社員さんには歯向かうんです。だから当時はトンガッてるように見えたかもしれません」 |
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普段は真面目でおとなしい方々だという話をよく聞くんですが。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん |
「でもボケ合戦をやらせたら、凄いですよ。一度ふたりでうちに泊まりに来たことがあるんですが、ふたりとも朝までボケ倒すんです。あんまりボケるんで『もう寝ようか』言うて電気消して布団かぶってんのに、矢部がベランダに行って変な格好して戻ってきたり」 |
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矢部さんがボケるというイメージが、あんまりないんで、意外です。 |
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| ぜん |
「いやいや、矢部もやるんです。矢部も凄いんです」 |
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なるほど。では次は雨上がり決死隊。 |
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| ぜん |
「アメ(雨上がり決死隊)も別の意味で別格でしたね。あいつら朝まで飲んで、(心斎橋筋)2丁目劇場の4階で寝て、そんで舞台に出るんです。出番ギリギリまで寝てて、『宮迫さん、出番ですよ』って起こされて、そんで目ざめて5秒でハイテンションな舞台がやれるんです」 |
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起き抜けに人を笑わせられるって凄いですね。起き抜けにメシ食うのもしんどいのに。 |
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| ぜん |
「蛍原も同じです。出番寸前までポーカーやってるんです。そんで途中で『蛍ちゃん、出番ちゃうか?』『ほな行ってくるわ』言うてパッと舞台に出て、客をガンガン笑わせて、戻ってきたらポーカーの続きやるんです。芸人やな〜、と思いましたわ」 |
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ぜんじろうさんは、それは無理なタイプなんですか? |
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| ぜん |
「僕は無理です。寝起きだと完全に声が飛んでます。それに僕は、出番前にいったん家に帰らないとダメなタイプなんです(笑)。荷物を置いて、衣装や小道具を持ってきて。楽屋と舞台の間に“自宅”をはさまないとダメなタイプでね。そうせな気持ちが切り替わらないんですよ」 |
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それだけ舞台に懸けてるとも言えるし、効率が悪いといえば悪いですよね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん |
「後輩からも『兄さん、なんでいまから家に帰りますの?』て訊かれて、『いや、家でシャワー浴びな気持ちがカラッとせえへんねん』ってね(笑)」 |
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| ―― |
いや、わかりますよ。僕もそういうタイプです。 |
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| ぜん |
「それにね、僕はなにかを身に纏わないと演じれないんです。身につけているもので芸が変わる。スーツ着たらスーツな芸になるし、パーティグッズだとパーティグッズな芸になってしまう(笑)」 |
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| ―― |
リットン調査団の水野さんも「パーティグッズは芸人の鬼門や!」って言うてはりました。 |
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| ぜん |
「パーティグッズのかつらじゃなく、元木かつらさん(吉本興業がよく使う舞台かつらをリリースする会社)のところまで行かないとダメなんです。でも彼らはパーティグッズでも本物の芸をやりよる。その対応力が凄い。めっちゃ芸人ですよ」 |
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では、次はFUJIWARAについて。 |
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| ぜん |
「FUJIWARAは、なんせ面白かったですね。舞台だけではなく、楽屋からもう面白いんです。とにかく藤本がテンション高い。あれで楽屋の皆が一気にテンションあがるんです。ガッパーッと。ムードメイカーというか、藤本のおかげでワッとやれたところはあります」 |
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原西さんはどうなんですか? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん |
「原西はね、藤本とは逆に普段はまったく喋らない。ぜんっぜん喋らないんですよ。でも舞台にあがるとガラッ変わる。舞台で人が変わるタイプでしたね」 |
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■お笑いはリーグ戦だ |
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続いて、このなかでは唯一解散しているチュパチャプスを。ただ解散しているといっても、ほっしゃん。と宮川大輔さんは、いまでも共演する機会が多いですね。 |
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| ぜん |
「まず、ふたりとも華があった。とにかく人気がありました。てんそで一番アイドル的な人気がありましたね。星田(ほっしゃん。)がボンボンで、かわいいじゃないですか。実際はクレイジーなんやけど。女の子が『かわいー、かわいー』てキャーキャー言うてね。自分も人気があるんちゃうかと勘違いをさせてくれたコンビでしたね(笑)」 |
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確かに男の僕から見ても愛らしいコンビでしたね。 |
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| ぜん |
「出待ちしてる女の子と喋ってるでしょ。そこへチュパ(チュパチャプス)が通ると、みんなそっちに行ってしまうんです。女の子、みんな持っていきよる。ひとり残されて『俺、人気ないなぁ』て凹みましたもん」 |
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でも、ぜんじろうさんだって、かなめ・ぜんじろう時代に女子からワーキャー言われてたじゃないですか。アイドル的な人気があったと思うんですが。 |
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| ぜん |
「あれは、かなめさんが人気があっただけなんです。女の子に人気があった事なんて一度もないですよ。高校時代から男子を笑わせてて、女子はドン引きしてたし。いまでも高校の同窓会に呼んでもらえないんですよ。『あいつは、なにしでかすかわからん』言うて(笑)」 |
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同窓会、僕も呼んでもらってない……。 |
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| ぜん |
「僕のネタは女の子にはウケませんわ。インド人を仕込んだりして、気持ち悪いでしょ?(笑)。しかもそのインド人から、『オレ実ハ、パキスタン人ヤネン。インド人テ呼バントイテクレ。宗教ノ派閥ガ違ウネン』ってモメてね(笑)」 |
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ワハハハ。では続きまして、この6組のなかでもっともカリスマ的な人気があって信奉者の多いバッファロー吾郎を。現今のお笑いのなかで、彼らが形成したシーン、功績は演芸史に特記すべきだと思うんですが。 |
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| ぜん |
「当時からパワーも発想も違いましたね。初めて観た時、心がガーッと動いて。もう大ファンになってしまって。彼らのあの頃のネタ、ぜんぶ言えますからね。本人たちが忘れてるものでも僕は憶えてます」 |
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バッファロー吾郎にもっとも衝撃を受けた点は、どういったところなのでしょうか。 |
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| ぜん |
「まず、ツッコミの概念を覆しましたね。普通ツッコミって『なんでやねん』と、観客の思ってる事を代弁するものじゃないですか。ところが木村は『バース45号!』言うて、バースがスイングする真似してツッコむんです。そんなん、いままで観た事ない」 |
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ほんと、ビックリしましたよね。では最後に、この6組のなかでは正直、出遅れ感がある、へびいちごを。すごく面白いと思うし、最近では再評価の熱が昂まってるという話も聞くんですが。 |
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| ぜん |
「島川も高橋も、画期的なネタをやっていたんです。クレイジーやし。もっとも笑いを取ったコンビなんですよ。下ネタやっても、女の子が笑う。あれは彼らがうまいしムードがいいから、客が引かずに笑えたんです。僕が下ネタやったらドン引きですよ。へびいちごには、客を引き付けるものがあるんです」 |
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もったいないと言うか、運が悪いのか、あんなに上手くて面白いのに、どうして出遅れてしまったんでしょうか。 |
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| ぜん |
「出遅れたんじゃなく、20年、30年やって結果を出すコンビやと思うんですよ。芸人ってリーグ戦なんですよ。長い目で見たら、彼らはきっと生き残る。バッファローがそうじゃないですか。彼らの面白さが伝わるまでに、時間がかかってるしね。僕はね、『面白い、面白くない』と『売れる、売れない』は別やと思うし、『いまテレビに出てる、出てない』と面白さって違うと思うんですよ」 |
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芸人はリーグ戦、とてもいい言葉ですね。 |
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| ぜん |
「僕が腹が立つのはね、よく芸人に対して『あいつら、おもろなった』とか言うじゃないですか。違うっちゅうねん! はじめっからおもろいんですよ。『だから最初から、おもろいって言うてるやん!』って。おもろさを伝えるためには、それだけ時間がね、かかるんですよ」 |
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なるほどね。では、ぜんじろうさんにとって『てんそ』は、どのような時間でしたか? |
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| ぜん |
「夢のよう……。夢のような期間でしたね。素晴らしい才能に出会えて、心が動いて……。みんなには本当に感謝しています」 |
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| こうして、ぜんじろうは『てんそ』を去る事となった。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。失意のなかにある彼に、意外な人物が声をかける。それまで敵陣にいた人物が新たに示唆した活路とは。次回、急展開! |
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| TEXT■吉村智樹 テープ起こし■泡の屑 撮影■おーしま2号 浪花の小池栄子 |
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