第十回 ぜんじろうの真夜なかん! かん!


永らく更新が滞りまして、申し訳ございません。
楽しみにしてくださっていた読者の皆さん、ぜんじろうさんに深くお詫び申しあげます。
■音楽番組を、笑いの番組に変えてしまえ
―― 前回、「かなめ・ぜんじろう」が解散し、相方の月亭かなめさんが芸人の世界を離れるに至ったまでをお話いただいたのですが。
ぜん 「漫才の仕事がなくなって、レギュラーの仕事がラジオ関西しかなくなったんです」
―― ミュージシャンの*種浦マサオさんとおやりになっていた*『真夜なかん! かん!』ですね。憶えてますよ。
ぜん 「種浦と一緒にやるのは、もっとあとでね。最初は音楽番組だったんです。ハーフの方が司会で、アシスタントの女性がいて、僕はサブのサブ。にぎやかしの役で出てたんです」
―― あ、そうなんですか。それはまったく知らなかったです。
ぜん

「ラジオ関西は老舗の音楽局で、お笑いとか、ラジオバラエティとか、それまではやってなかったんです。ミュージシャンの方が『ハーイ! リスナーのみんなぁ、元気ぃ?』みたいな番組が多くて」

――

どうしてぜんじろうさんが起用されたのですか?

ぜん 「かなめ・ぜんじろうで若い子に人気があったから、『こいつは吉本のなかでも音楽に詳しい』と思いはったんとちゃいますかね」
―― なるほど。
ぜん 「ただね、僕はもう自分の笑いを試せる場所がラジオしかなかったんです。だから『これに賭けてみよう』と。音楽番組からネタ番組に変えるよう、企画書や台本を自分で書いてね。ディレクターを説得しまして」
―― 例えば、どんな内容なんですか?
ぜん 「いきなりオープニングから、事故が起きるんです。やらせの。キーッ、ガッシャーンって車がぶつかる*SEを出してね。ピーポー、ピーポー、バターン! 『ただいま事故現場に到着しました!』言うて。嘘のニュースを流すんです」
―― そんな音楽番組、聴いたことがないですよ。
ぜん 「あと、『二十秒間、黙っとこう』とかね。放送事故ギリギリまで黙るんです」
――

確かに斬新ですが……、周りの人がよくついてきましたね。

ぜん 「それがね、DJの人が『なんでこんなことせなあかんねん。もう辞めたい』って言いだして」
―― あぁ……。
ぜん 「アシスタントの女性も、スタッフも、もう辞めたいと言いだしまして。それで、みんな、いなくなったんです。そんで、喋る相手がいないから、高校時代の後輩の種浦を呼んだんです」
―― あの、失礼ながら、ぜんじろうさんだけを降板させるという発想はラジオ局にはなかったのでしょうか。
ぜん 「たぶん僕の説得が熱かったから、『こいつなら旧態依然としたラジオを変えてくれる』と思ってくれたんじゃないでしょうか」
―― 理解してくださったんですね。
ぜん 「ただ、ディレクターの戸田さんもビビッてましたよ。毎週、酔っぱらいながらやってはりました。『こいつ、なにしでかすかわからんから、怖い』って。社員の人に収録風景を見られないように、カーテン閉めてやってましたから(笑)。僕ら、キチガイでしたからね」
■あの強敵裏番組を実況!
ぜん 「もうひとつ、番組が続いた理由があるんですよ」
―― それはなんですか?
ぜん 「ラジオ関西の部長がUFOマニアでね。UFOと交信してはるんです」
―― はぁ。交信って……。確かにラジオの仕事をするにはピッタリの人ですけど。
ぜん 「それを聞いて、僕らはすぐUFOのコーナーをやったんです。そしたら、『この番組はいい!』って、えらい気にいってくれはってね」
―― あ、UFOのおかげで番組が継続できたんですね。
ぜん 「そうです。ただ、部長に気にいられる対策でやったコーナーやから、『え? 今日は部長が出張でいてない? ほんならせんとこ』いうて、その週は好き勝手なことやってました」
―― 面白そうですね。申し訳ないですが、その当時はリスナーではなかったので、聴かなかったことを凄く後悔しますよ。しかし裏番組の*『誠のサイキック青年団』(ABCラジオ)が大人気だったじゃないですか。深夜ラジオの激戦区ですよね。よくそのなかで健闘されましたよね。
ぜん 「むこうも過激でしたし、こっちは別の過激をやらないと。誰も振り向いてくれないでしょう。そのためには『喧嘩しかない!』と」
―― 喧嘩? 種浦さんとですか?
ぜん 「いえいえ。ラジオで僕らが『トラックの無線やってるやつはアホや』って言うんです。そしたら、トラックの運ちゃんがドア蹴って怒鳴りこんできてね。僕ら、殴られて。ディレクターがマイク持って、『リスナーの皆さん、すみません。いまから30分は曲だけをお聴きください』言うて」
―― えらい挑発ですね。
ぜん 「それ、ぜんぶウソなんです。芝居なんです。そしたら次の週はハガキが高さ5センチくらい届くんですよ。『ぜんじろう、あんなやつ、やってまえ!』言うて。そんで『ぜんじろう応援団』いうの作って、スタジオにそいつらを呼んで遠吠えさせたり」
―― なんかムチャクチャに目茶苦茶ですね。
ぜん 「その応援団のなかに『饅頭が空を飛ぶ』っていうペンネームの男がいて、それがのちの*福原フトシなんです」
―― 福原さんといえば、売れっ子の放送作家じゃないですか。優秀な人材も輩出されたんですね。
ぜん 「あと、『サイキック青年団』の実況もやりましたよ。サイキックを聴きながら毒づくんです。『誠、寒い』『誠、相槌打っとるだけやん』って。誠さんばっかり(笑)」
―― 裏番組の実況、しかもクサすって、過激ですね。そうやって、若者の間にぜんじろうさんの名が再び広まっていったんですね。
ぜん 「いや……。それはあくまでアンダーグラウンドの話であって、そんな笑いを追求していくと、花月や心斎橋筋2丁目劇場では、またくウケないんですよ。吉本とも、どんどん溝が深まっていって……」
   
 

 自らを「キチガイ」と呼ぶ、ぜんじろう。彼の笑いの根本が狂気であるならば、その発露の場所は深夜ラジオしか許されなかった。そして、遂にその鬱憤が爆発。彼は、あるお笑いユニットを発足させる。暗黒から生まれた、そのお笑いユニットとはいったい。次回をお楽しみに(今度こそ、ちゃんと交信、おっと更新します)。

 *『ぜんじろうの真夜なかん! かん!』 1991年にスタート。リスナーどうしの電話口げんか、真夜中にイタズラ電話をかける、おっさんが乱入し電波ジャックされるなど、数々の逸話を残したラジオ番組。
*種浦マサオ 通称:ターネー。兵庫県姫路市出身のミュージシャン。ぜんじろうのあとを継いで『真夜なかん! かん! 過激団!!』のメインパーソナリティとなる。現在はぜんじろうと『ぜんタネ』(スカイパーフェクトTV!)を放送中
*SE サウンドエフェクトの略。効果音。
*福原フトシ 笑う犬シリーズ、ロバートホール、ズバリ言うわよ! など人気番組を多数手がける放送作家。
*『誠のサイキック青年団』(ABCラジオ) 1988年にスタートし、現在も続く不動の人気番組。北野誠、竹内義和らが世の暗部を鋭くえぐる「深夜の情報判断番組」。過激発言のため物議を醸すことしばしば。
 
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 木の葉燃朗
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