|
|||||||||||||||||||||||||||
![]() | |||||||||||||||||||||||||||
| ■「お前はラッキーやから、芸名は“ラッキーぜんじろう”や」 | |||||||||||||||||||||||||||
| ―― | あけまして、おめでとうございます。今年も刑事の取り調べなみに根掘り葉掘り過去の話を訊いていきますので、どうぞよろしくお願いします。さて、昨年末は「吉本興業にスカウトされた」というところまでお話を伺いました。しかも、とあるテレビ番組にいきなり出演できるという豪華なオマケつきだったわけですが、それはなんという番組だったんですか? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「読売テレビの『気分はジャマイカ』っていう番組でね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 『気分はジャマイカ』! 懐かしい〜。毎週観てましたよ。おれがぜんじろうさんのことを初めて知ったのも、この番組でした。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「吉本の泉さんのアイデアで、『吉本からアイドルを生み出したい』という狙いがありましてね。泉さんという人は、のちにモーニング娘。を手がけられるだけあって、アイドルがお好きなんですよ。それで、僕がこの番組で吉本デビューすることになったんです」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | なるほど。確かこの番組では明石家さんまさんのモノマネをされてましたよね? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうです。『お前、さんまによう似とるな』いうことでね。大竹しのぶさんのソックリさんとふたりで『男女七人夏物語』のパロディコントを毎週やってました」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | あー、うっすら憶えてます。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「この大竹しのぶさんのソックリさんが、ほんまに似てるんですよ。めっちゃ似てるんですよ。僕はさんまさんに顔は似てるけど、モノマネはそない似てないですから、相手のソックリさんが長いセリフを喋ったあと、『もう、ええねや』。それだけ(笑)。なにを言われても『もう、ええねや』。しまいに『お前がもうええわ』って言われましたわ(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 芸名はその頃から「ぜんじろう」だったんですか? うろ憶えなんですが、もっと長い名前だったような記憶があるんですが。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんですよ。泉さんが、『アイドルなんやから、カタカナの名前がいい。お前はラッキーやから、今日から“ラッキーぜんじろう”という名前に変えろ』って言わはってね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 「お前はラッキーやから」って! でも確かに一時期「ラッキーぜんじろう」という芸名で出てらっしゃいましたよね。思い出しました。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「僕も新人やから、『……はぁ、それでお願いします』としか言えないじゃないですか。ただね、上岡師匠に言いにいかなあかんでしょう? それがいやでね。『僕、今日から“ラッキーぜんじろう”になりました』って言うの」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | そうでしょうねぇ。師匠の知らないうちに芸名が決まったわけですからね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そしたら泉さんが、『俺が上岡師匠に言いに行ったる』って言うてくれはって。そんで師匠に事情を説明してくれはったんですよ」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ああ、それはよかった。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「泉さんが上岡師匠に、『彼、ラッキーでっさかい、ラッキーぜんじろうになりました』って。そしたらそれを聞いた師匠が……えらい爆笑しはってね(笑)。『こいつラッキーかぁ?』いうて(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ああ、でも上岡師匠はお怒りにはならなかったんですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「師匠はそういうことには凄い理解のある人なんですよ。ただ、別の人がえらい怒りはって」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | それはどなたですか? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「木村さんです(註*元吉本興業常務取締役)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | え? よ、吉本興業のトップクラスじゃないですか! | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんです。『ラッキーぜんじろう? なんちゅうダサイ芸名つけとんねや!』と」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | う〜む、さすが木村さんというか。慧眼ですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「こう言わはったんです。『ラッキーはええ。ぜんじろうってなんやねん』と」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | そっちかい!(笑) | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そんで、『ぜんじろうがダサイ。“Z”にせえ。ラッキーZにせえ』と」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ラッキーZ! どこの星から来たヒーローですか、そいつ。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そんで、いろいろ話し合いがありまして」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | はい。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「結局“ぜんじろう”になったんです」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | なんじゃそりゃ!(爆笑) | ||||||||||||||||||||||||||
| ■ジャマイカどころかシベリア気分 | |||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 吉本デビューとなった『気分はジャマイカ』という番組について、もう少し伺いたいのですが。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「芸人からアイドルを生み出そうというテーマがあったことからもわかるように、大阪色というか吉本色をぬぐい取るのが狙いやったんやと思います。司会も嘉門達夫さんと野々村真さん、ふたりとも吉本の人やないですし、コテコテやないやないですか。あとは野沢直子さん。あんまり大阪とか吉本のカラーやない人で司会してましてね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 当時で言う「ナウい」番組を目指したのでしょうか。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうやったと思います。あと、『ヤング・おー!おー!』をもう一度甦らせたいっていうのがあったんですよ」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 『ヤング・おー!おー!』といえば、70年代の伝説の番組ですよね。この番組から数多くのフォークソングのヒット曲が生まれ、カップヌードルをはやらせ、芸人さんも若者のカリスマとして多数輩出して。桂三枝さん、笑福亭仁鶴さん、紳助竜介(のちに竜助)、B&B、ザ・ぼんち、のりおよしお……。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「あと、なんと言っても『ザ・パンダ』(月亭八方・林家小染・桂文珍・桂きん枝)ですよね。いまの若い子が聞いたら信じられへんかもしれへんけど、この4人、アイドルでしたからね。そこにさらに明石家さんまさんが入ってきて、そらもう凄い人気だったと聞いてます」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | サニー(桂三枝)&チャッピー(明石家さんま)! ザ・パンダ・フィーチャリング明石家さんまっていう感じでしたもんね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そんで、『ザ・パンダをもう一回復活させよう』いうことで、それぞれのお弟子さんだけでアイドルユニットを作ったんです。月亭かなめさん、林家染八さん(現・五代目林家小染)、桂楽珍さん、桂きん太郎さん。ユニット名が、みんな弟子やから、弟子→でし→DCで“DCブランド”(笑)。DCブランドいう言葉が流行ってたんですよ」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | DCブランド! ありましたね〜。当時それ聞いて、正直言って「ダサッ」と思いました。すみません。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そんで、そこに僕が準構成メンバーとして加わって“ジャマイカボーイズ”になったんです」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | なるほど! さんまさんに似てると言われたぜんじろうさんが加わって、まさにザ・パンダの再来ですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうですね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ……ただ、ザ・パンダの頃は上方落語が関西の若者の間でも大ブームで、実際いまでは俄かには信じがたいでしょうが、みんなルックスがアイドルっぽかったじゃないですか。年齢も若いし。でもDCブランドの頃は、若者が落語にそっぽを向いてま したし、厳しいなぁと思って観てしまってました。桂楽珍さんなんて、すごく好きなんですが、いくらなんでもアイドルには見えないじゃないですか。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「それにみんな、普段は古典落語やってはるでしょう。真面目な人ばっかりなんですよ。みんなええ人なんですよ。心のどこかに『わしゃ古典やっとんねん。タレントやないねん』いうプライドもあったと思う。でもバラエティ番組やと、そういうこととは別のもんも求められますよね。例えば罰ゲームは『痛い、痛い』いうリアクションとって、のたうち回らな成立せえへんでしょ」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | そうですよね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「いっぺん、こんなことがあったんです。口にゴムくわえて、ビューン伸ばして、離して顔に当てるっていうゲームがあったんです。そんで楽珍さんの顔にバチーン当たったんですよ。そしたら楽珍さんの言った言葉が、『いっこも痛いことあるかい!』(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | それ言っちゃダメじゃないですか! | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「俺は男や、痛いなんて言わん、みたいな」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 「痛い」と言うことをカッコ悪いと思いはったんでしょうかね。でも、そこを我慢したら、ゲームがなにもかも水の泡じゃないですか。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そんで、CMになったんです。『痛いことあるかい!』の叫びを最後に(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ワハハハハ! バラエティ全否定のままCMに。でも楽珍さんのお人柄がわかる、いいエピソードですよね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「ほんま爆笑でしたね。僕も楽珍さん、大好きになりましたもん。泉さん、頭抱えはってね。『楽珍の狙いはなんやねん……』言うて。『俺には、こいつらの考えてることがわからん……』言うて。まぁ、そんなこんなで、視聴率もふるわず、番組は終わってしもうたんですよ」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | うーん……。モチーフになった『ヤング・おー!おー!』は時代を牽引しましたよね。でも『気分はジャマイカ』は“DCブランド”という名前からして、時代を後追いしてるじゃないですか。言い方は悪いですが、時代に媚びてるというか。そのへんって、若い子は敏感に感じ取りますよね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「それに、時代的にも観客的にも吉本的にも、『弟子ってダサイ』っていうムードもあったんですよ。ダウンタウンとか圭修さんとか、師匠についてない人たちが凄い人気で。僕ら弟子っ子は、ほんま日陰の存在になっていきましたね。心斎橋筋2丁目劇場でも、どんきほーてさんとか、弟子やってた人らはみんな出られへんようになってね。行き場をなくした時代でしたね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| 潮流というものは残酷なもので、ダウンタウンファミリーなどノーブランド芸人の台頭により、弟子というだけで不遇を強いられる芸人群が行き場をなくしてさまよっ
ていた。 しかし、ある意味で伝説の番組『気分はジャマイカ』の、さらにある意味で伝説の落語家ユニット“DCブランド”のなかで、ただひとり時代を席巻するアイドル性を兼ね備えた芸人がいたのである。その男との出会いにより、ぜんじろうはごぼう抜きで一気にブレイクする。 次回、今度こそ本当の伝説の漫才師「かなめ・ぜんじろう」時代に突入。 | |||||||||||||||||||||||||||
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 木の葉燃朗 |
|||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||
| ご意見ご感想は、掲示板まで
ブログ『ポジぜん』 http://blogs.dion.ne.jp/posizen/ HP『ぜんじろうハリウッドへの道』 http://www.fandango.co.jp/zenjiro/ インターネットラジオ『ぜんじろうのデジゼン』 http://dp37022342.lolipop.jp/dedizen/ もっと知りたいぜんじろうの魅力 |
|||||||||||||||||||||||||||