第四回 嵐の家族会議
■地元の友達も大騒ぎのテレビデビュー しかし……
―― 弟子修業中にも関わらず、いきなりテレビ出演の依頼とは恵まれたスタートじゃないですか。しかもサンテレビの当時の大人気番組『おとなの絵本』とは。
ぜん 「収録は桜ノ宮のラブホテルでしたね」
―― さすがは、おとなの絵本(笑)。それで、どういうコーナーにご出演なさったんですか?
ぜん 「まず風呂の中で、裸で愛染恭子さんとトークしますねん。そんでサイコロを転がす。サイコロには『オッパイがなめられる』とか『水中でアソコが見られる』とか、いろいろヨゴレなことが書いてある」
―― いいなぁ。エロ版「ごきげんよう」じゃないですか。エロバナ。
ぜん 「そんで僕は愛染恭子さんのオッパイなめられることになったんです(笑)。一緒に収録に来てた桂三象さん(註*桂三枝の弟子)は水中メガネで愛染さんのアソコ見てはりましたわ(笑)」
―― いやぁ、役得ですねぇ。お友達からも羨ましがられたんじゃないですか?
ぜん 「実は僕、ええかっこ言うわけやなく、おとなの絵本ってそれまで観たことなかったんです。高校時代はそないテレビも観てなかったし、大阪に出てきてからは、サンテレビは映らなかったですからね(註*サンテレビは兵庫県のテレビ局)。そんで、『誰も観てへんやろ』と思ってたんです。そしたら地元のツレからじゃんじゃん電話かかってくるんですよ。『昨日、おとなの絵本に出てたん、お前ちゃうか?』いうて。その反響の大きさにビックリしましたわ。姫路のツレにとって、あの番組はアダルトビデオの代わりやったんですね」
―― 夜明けたらスターじゃないですか。芸人ぜんじろうの勇姿を地元のお友達に知らしめることができて、よかったじゃないですか。
ぜん 「それがね、そうでもないんですよ」
―― え? なんでですか?
ぜん 「観てたん、ツレだけやなかったんです」
―― え? ほかにどなたが?
ぜん 「親父が観とったんです」
―― えーッ!
ぜん 「アダルトビデオ代わりに」
―― ワハハハハハ! 乳をなめてるところを父が。
■「あれはどういうことや。家に帰ってこい」
―― いや、笑ってすみません。でも、それは大変なことになりましたね。だってお父さんは、ぜんじろうさんが学校を辞めたことをまだ知らないんでしょう? 大学に通ってデザインを勉強していると思ってたわけですよね?
ぜん 「そうなんです。それで、『あれはどういうことや。家に帰ってこい』と。家族会議ですわ。そんで姫路に戻りましてね。もちろん、いつものように文房具を買うていって」
―― 文房具って(笑)。それを言うなら画材では。
ぜん 「そうそう、画材ですわ。それから芸大生がよう持ってる筒も持ってね」
―― 筒って(笑)。
ぜん 「あれ、中になに入ってますの?」
―― あれは作品を丸めて入れるケースじゃないかな。
ぜん 「そうなんですか。いまのいままで知りませんでしたわ(笑)。そんで、まだ芸大生やっていう素振りで家に帰りましてね。『実は上岡龍太郎の弟子をやってる』と白状しまして」
―― ご両親は芸人になることは反対されませんでしたか?
ぜん 「それはないですわ。息子が芸人になることは、大喜びなんです。ただ、『じゃ、学校はどうすんねん』と」
―― やっぱり、それが気になるところでしょうね。
ぜん 「そんで僕は、『続けられへん』と」
―― 続けられへんもなにも、もう辞めてるじゃないですか。
ぜん 「そうです。でも『辞めた』とは言わない。あくまで『続けられへん』と。そしたら親は『いや、学校だけは出てくれ』と。そんで僕も『わかりました』と」
―― いや、わかりましたって、もう辞めてるじゃ……。
ぜん 「辞めてるなんて自分からは言いませんよ〜。だって親が払ってる授業料で生活してるわけですから」
―― 授業料で2LDKに住んでたんですもんね(笑)。でも僕も芸大生やったからわかるけど、授業料めっちゃ高いじゃないですか。大阪芸大って年間100万くらいするでしょう?
ぜん 「僕はもっと高くてもよかったんですけどね(笑)」
―― ワハハハハ。じゃ、親御さんはその後も大学に行きながら芸人をやってると信じてたわけですね。で、芸人として、おとなの絵本出演のその後はどんな感じだったんですか?
ぜん 「次は……話はちょっと前後するんですけど、おとなの絵本に出る前に梅田の地下街をぶらぶら歩いてましてね。そしたら前から桂珍念くん(註*桂文珍の弟子 元漫才コンビ未来世紀01・02)が歩いてきたんです。うちの師匠と文珍師匠がようテレビで共演してはって、それで弟子どうし僕らも仲がよかったんです。『珍念くん、いまからどこ行くの?』って訊いたら、『新番組のオーディション受けに読売テレビに行く』って言うんです。『そんなら俺もついていくわ』言うて、僕も一緒に行ったんです」
―― 読売テレビの新番組……。もしや、あの……。
ぜん 「そしたらそこに吉本興業の泉さん(註*のちのモーニング娘。の生みの親のひとり)いう人がおって、この方、おとなの絵本も担当されてたんですよ。そんで、『わ、吉本興業の偉いさんや!』と思って、顔を憶えてもらおうと、おもいっきりネタ喋ったんですよ。そしたら『君、おもろいなぁ。吉本に入らへんか?』って言うてくださってね」
   
   一介の弟子っ子だったぜんじろうに、遂に吉本興業からスカウトの声が! そう、 ぜんじろうは吉本からスカウトされて入った、言わばドラフト指名のラッキーボーイ だったのだ。そして、いきなりビッグなチャンスを掴むことになるのである。
  *今年の更新は今回で終わりです。次回は2005年1月第二週目の週末を予定しています。
   
 
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 鈴々舎南風 木の葉燃朗
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