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| ■ 「怖い方のおっさん」との運命の出会い | |||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 大学を辞めて、どうされたんですか? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「友達と遊んでましたね。それで、ある日ね、ラジオ大阪の前をツレと歩いてたんです。そしたら僕らの前を、メガネかけたおっさんが歩いてたんです。『あれ? どっかで見たことあるな〜』と思ってね。どっかで見たことあるけど、名前が思い出せない。そしたらツレが叫んだんですよ。『おい、あれ、浜村淳や!』て」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | メガネかけた男って、浜村淳さんだったんですか。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「当時、浜村淳さんは『夕やけニャンニャン』のレギュラーをやってはって、十代の若い子でも顔を知っとったんです。『浜村淳や。サインもらおー、サインもら おー』いうて近寄ったら、なん〜か違うんですよ。『おい、浜村淳にしては、顔黒いぞ』『ほんまや、あれ浜村淳ちゃうわ。怖い方のおっさんや』いうて(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 「怖い方のおっさん」、ワハハハ。誰だかわかりました。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そう、上岡龍太郎やったんです(註*ぜんじろうさんがまだ弟子になる前の十代の頃の話なので、時間軸に沿って敬称略)。正直ね、若いもんにとって、当時は上岡龍太郎って、そない人気なかったんです。気難しいし、出てる番組も『花の新婚カンピューター作戦』『ノックは無用!』とか、おばはんが観る番組の司会者っていう イメージやったし」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 確かに上岡龍太郎さんが全国的なブレイクをするのって、そのずっとずっと後で したもんね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんです。正直ね、その頃はまだ上岡龍太郎、どうでもよかったんです。 そんで、『どーしよー、浜村淳ちゃうであれ。サイン貰うん、やめとこか』いう話をしてたんです。そしたらね、向こうの方から『君ら、握手したいんか?』って、ニコッと笑いはったんですよ | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 気難しいイメージの上岡龍太郎さんがですか? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんです。ビックリしてね。えらい優しかったんです。そんで握手してもらって。そのあと、ボーリング場に入っていかはった」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 意外な一面ですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「ツレはそのあと姫路に帰ったんですが、僕はそのまま街をぶらぶらしてたんです。そしたら、また会うてね。向こうも『また会ったな』って言うてくれて。そんで今度は『お茶、飲みに行こうか』って誘われたんですよ。」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ■ 「君、上岡大学に入らへんか?」 | |||||||||||||||||||||||||||
| ―― | えーっ!? 上岡龍太郎さんにですか? いいなぁ。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「喫茶店に連れていってもらってね。お茶をご馳走になって。ご馳走になったからには、なんかせなあかんと思うじゃないですか。そんで笑わそう思って、いちびって『弟子にしてください』って言うたんです」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | ついさっきまで浜村淳さんと間違えてたのに(笑)。これまたいきなり弟子にしろって。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「もちろん本気やないですよ。そしたらね、『ええよ』って(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 軽っ! 引き下がれない(笑)。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんです。もう、いまさら嘘やて言えない。そんで、自分の話をいろいろしたんです。『大学を2日で辞めまして、お笑いに興味がありまして』みたいな話をね。そしたら、『大学を2日で辞めた? そらおもろい。君、売れるかもしれんな。どうや、上岡大学に入れへんか?』って言わはって」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 上岡大学! 粋なこと言わはりますね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「僕もだんだんノッてきてね。『上岡大学、入ります。師匠の大学、授業料はなんぼですか?』『そやな、ここのコーヒー代、って、なんでやねん!』いうて向こうもノリツッコミしはって(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | やっぱり面白い人ですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「どうしようかな思って、また街をぶらぶらしてたんです。そしたらね、阪神百貨店の前で、また会うたんです」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | 三度目ですか!? それもう運命じゃないですか。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「そうなんです。運命を感じてね。こらもうほんまに弟子にならなあかんと思って。師匠のもとに走っていったんです。そしたらね、師匠、逃げはったんです(笑)」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | あ、向こうも本気じゃなかった? | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「違うんです。『刺されると思った』そうです(笑)。そんで師匠のとこに走っていって、『すんません! 嘘ついてました! 実は浜村淳さんと間違ごうてました!』って言うたら……爆笑されてね(笑)。それで上岡龍太郎の弟子になりました」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | あぁ、運命ってほんとにあるんですね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「確かにね、それは感じますわ。あとで思い出したら、たまたま前に晩に『ナイト・イン・ナイト』を観ててね。師匠が出てはったんです。そんとき話してたのがね、『煙草っちゅうもんは、二十歳前に吸うたらいかんと言われてるけど、あんなん嘘であって。いくつからでも吸うていい。実際、未成年で煙草吸うてて補導されることはあっても、罰せられることはない。警察から煙草を吸うてる容疑で取り調べを受けることもない。たとえ持ってるのが見つかっても、持ってるだけです、親に持っとけと言われた、と答えればいい。未成年が煙草を吸ったらいかんなんて、実際は嘘なんですよ』みたいな話をしてはったんです。『おもろいこと言いよるなー、このおっさん』と思ってね。僕も高校時代に煙草で停学くらったときに『親が間違って入れた』って言えばよかったと思ってね。それが、師匠に偶然出会う前の晩なんですよね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | たまたま前の晩に観たというのがね、ますます運命を感じますよね。 | ||||||||||||||||||||||||||
| ぜん | 「いわゆるデジャヴュいうやつでね」 | ||||||||||||||||||||||||||
| ―― | いや、それ、シンクロニシティちゃいますか?(笑) | ||||||||||||||||||||||||||
| こうして晴れて上岡龍太郎の弟子となった、ぜんじろう。しかし上岡大学は、たとえ入るのは容易であったとしても、実はなかなか単位が取れない厳しい大学だったのだ。次回、ぜんじろうの弟子修業時代の巻。 | |||||||||||||||||||||||||||
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 鈴々舎南風 木の葉燃朗 |
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