第一回 たった2日間の大学生活
■「アホでも行ける大学」の入学騒動
――ぜんじろうさんは、学生時代はどんなふうに過ごされたんですか?
ぜん「中学・高校と、まったくモテませんでしたね。『かまきり』『ボヤッキー』と か、あだ名つけられて(笑)。高校を出るまで、ひとりも彼女できませんでした。そ れに、アホやったんです。成績は451人中、451番でしたから」
――ある意味、トップですね。
ぜん「アホやったけど、ポリシーはあったんです。『勉強は一切しない』っていうポリシー。勉強をやって成績が悪かったら、ほんまのアホでしょ? だから、『勉強したら、できる。やらへんから、でけへんのや』と」
――うん。なんか、共感しづらいポリシー(笑)。
ぜん「勉強は、ほんましませんでした。ただ、親が厳しくてね。『大学には行け』 と。そんなん、僕の成績で行ける大学なんてないじゃないですか」
――そうですよね。
ぜん「ところが大阪には一ケ所だけ、アホでも行ける大学があったんです」
――それは、どこですか?
ぜん「吉村さんもご存知の、大阪芸術大学」
――ワハハハハハ、我が母校(笑)。あそこはアホでも行ける大学じゃなく、アホしか行けない大学ですからね。学校の成績がよかったら落ちますからね。
ぜん「それに、言い訳もできるじゃないですか。『学校の成績なんて関係ない。俺は芸術家になるんや』言うて。あと、大学に行ったら、親元から離れて独り暮らしができるぞと。それしか考えてませんでしたね」
――学科はどちらをお受けになったんですか?
ぜん「デザイン学科です。別にデザインに興味があったわけでも、芸術に興味があったわけでもない。だって、入試の日まで大学がどこにあるのか知りませんでしたもん(笑)。てっきり梅田にあると思ってたんです。そしたら、南河内って! ビックリしましたわ。あんなに遠いとは思わんかった」
――それ、東京で例えたら「新宿にあると思ってたら、青梅市だった」くらい離れてますよ。
ぜん「そんなんでね、入試の日に遅刻したんですよ。課題が『花瓶をデッサンしなさい』。遅刻もしてるし、どうせ落ちるやろ。もうどうでもええわと思って、花瓶だけじゃなく、周りのもんも全部描いたったんですよ」
――教授から怒られませんでしたか?
ぜん「それで、面接の時に教授から、『君、なんで花瓶だけやなしに、周りのもんも描いたんや』って訊かれたんです。それで、『僕は自分の目に見えるものは、ぜんぶ芸術やと思ってますから』って答えたんです。そしたら……えらい感動されてね(笑)」
――ワハハハ。
ぜん「教授から、『君はデザインに興味あるか?』って訊かれたんです。それで、はっきり『ないです』って答えたんです。『なに? ない? う〜ん……』いうて、これまたえらい感動されてね(笑)。それで受かったんです」
――よかったですね(笑)。
■夢の? 偽りの大学生活
――大学生活は、どんな感じでしたか?
ぜん「大学生活いうても、2日で辞めましたからね」
――なにー!
ぜん「入学式、行ってませんもん。大学の入学式って、大学でやるわけじゃないんで すね」
――確か、中之島のホールでやりましたね。それこそ、梅田に近い。
ぜん「そんなん知らんから、大学に行きましてん。そしたら、やってないんですよ。 入学式」
――でも、どこそこでやるっていう案内状が届いたでしょう?
ぜん「そんなん見てませんもん。履修届けも出してないし」
――履修届けを出さなかったら、いきなり留年ですよ! 履修ガイダンスとか行かなかったんですか?
ぜん「入学式も行ってないのに、そんなややこしいもん行きますかいな。つまりね、大学に行く気がハナからないんですよ。とにかく親元から離れたい一心だったですね」
――でも、入学金は親御さんが払われたんでしょう? 大学を辞めたら、また親御さんの元へ戻らないといけないじゃないですか。
ぜん「だから当然、親には内緒ですよ。ここからが僕の賢いところでね。大学には退学届けを出しますでしょう。その時に、『親が離婚して住所が変わったから、ここに送ってくれ』って、自分が住んでるところの住所を言うんです。親には、『大学の授業料は、ここに振り込んでくれ』って、自分の口座を教えるんです。一石二鳥でしょ? だから親は、僕が大学を辞めたことを知らないままなんです」
――ええー! じゃ、授業料は、ぜんじろうさんの懐に……。悪いやっちゃなー(笑)。
ぜん「だから僕、2LDKに住んでましたもん」
――ワハハハ! でも、いつかバレるでしょう? バレませんでしたか?
ぜん「そらもう、いつバレるかと思ってヒヤヒヤもんでしたよ。姫路の実家に帰るときはいつも、駅前でものさし買うていってね。絵の具も買って、ちょっとだけ服につけて汚すんです。そんで家に帰ったら、『デザイン、きついわ〜』言うて、愚痴こぼすんです。芸大生に見えるように(笑)」
――でも、お話をうかがっていると、学校の勉強はしなかったかもしれないけれど、ある意味、賢いですよね。
ぜん「僕のポリシーなんですよ。『ただでは起きないぞ』と。マイナスをプラスに変える生き方なんです」
――マイナスって、な〜んも挫折してないがな(笑)。丸儲けじゃないですか。それで、大学を辞めて、どうしてたんですか?
ぜん「友達と遊んでましたね。それで、ある日ね、ラジオ大阪の前を友達と歩いてたんです。そしたら僕らの前を、メガネかけたおっさんが歩いてたんです。『あれ? どっかで見たことあるな〜』と思ってね」
  
  この「メガネのおっさん」こそが、のちのぜんじろうの人生を大きく変えることになる、アノ人だったのである。次回、いよいよぜんじろうの芸人人生が始まる!
  
 
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 鈴々舎南風 木の葉燃朗
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