プロローグ 「ぜんじろうは“消えた”のか?」
■ インターネットに氾濫する、ぜんじろう“消えた”説
――連載一回目で、いきなりキツイ質問をします。ぜんじろうさんの世間のイメージって、正直言って「消えたタレント」なんです。もちろん、いま目の前にいらっしゃるわけですから消えてなんかいないし、毎日お仕事で忙しくされているのも知ってるんですが……。これについて、どう思われますか?
ぜん「そういうイメージを持たれてることはもちろん知ってますよ。いまはテレビに出してもらえないですから……。世間の人にとっては、『テレビに出てない=消えた』ですからね。インターネットでも、自分の名前って検索するじゃないですか。芸人やったら誰しも確実にしてますよ。書き込みを見てますとね、『ぜんじろうって今なにやってんの?』『芸人やめたんちゃう?』とか、そんなんばっかり。単に自分の名前だけで検索するよりも、『ぜんじろう 消えた』で検索した方が早いですからね(笑)」
――いい意見はないんですか?
ぜん「いい意見は少ないですわ。あったとしても『懐かしいです』『まわりは嫌ってますけど、私はいいと思います』とか(笑)」
――やっぱり、そういう書き込みを見ると、ヘコむもんですか?
ぜん「いまはこうして笑って話してますけどね。そらヘコみますわ。30分くらい立ち直られへん。でも、一般の方はまだいいんです。この前なんか、親から金を送ってきましたからね。『あんた、最近テレビに出てへんけど、ちゃんと食べれてるか?』言うて。食えてるっちゅうねん(笑)」
――視聴者は、好き放題書きますもんね。
ぜん「一般の方だけやのうて、仕事場でもキツいですよ。大阪やったらスタッフの方が『ぜんじろう、最近テレビ出てへんやないか。どうやって暮らしてんねん』っていきなり言われますからね。容赦ない。でも大阪はまだ目の前でズバッと言うてくれるからいいんです。東京やとスタッフの方が陰で『おい見ろよ。あれ、ぜんじろうだよ。あいつまだ生きてんのかよ』とか、陰でこそこそ言うてるんです。しかも、ちょっと聞こえるように。あれはキツイですわ……」
■ 成功したかに見えた東京進出だが……
――でも、なんで消えたと言われるようになったのか、それが不思議なんです。大阪でいまも語り種となってる伝説の番組『テレビのツボ』(註)で一世を風靡して、その後、上京された時は『天才たけしの元気が出るテレビ』や『アッコにおまかせ!』など、14本もレギュラーがあったそうじゃないですか。おれら上京者にとって勇気が持てる憧れの存在だったし、芸人が上京して成功する好例だったと思うんですが。
ぜん「テレビ界での人付き合いが、へたくそでしたね。一般社会の人付き合いみたいなものがイヤでこの世界に入ってきたけど、テレビという社会もまた人付き合いって大事だったんですよ。そういう心構えもないまま東京に出てきてしまった。例えばここに中山秀征さんがいたとするでしょ。きっと思いっきり僕らを楽しませてくれますよ。一緒にいると、ぜったい心地よくなりますよ。中山秀征さんと一緒に仕事をさせていただいて、本当に勉強になりました。楽屋に入ってから、収録が終わって楽屋から出ていくまで、ずっと“サワヤカな秀ちゃん”のまんまなんです。テレビのなかの秀ちゃんと、テレビに映ってない時の秀ちゃんが同じなんです。それを観て、『八方美人だ』『媚びてる』と批判する声もありますが、そんなん全部わかったうえでやってはったんと違いますかね。僕はそれができなかった。楽屋に入ったら、ずっと引きこもってましたもん(笑)」
――そりゃ扱いづらい(笑)。確かにあの頃、ぜんじろうさんって凄く売れてるんだけど、孤独な印象はありましたね。どこのファミリーにも属してない。例えば、中山秀征やったら志村けんファミリーというイメージがありますよね。吉本だったらダウンタウンファミリーとか。そういった派閥、といってはおかしいですが、仲間に入ってないというのは感じてました。もっと売れてる人にすり寄っていけばよかったのに。
ぜん「あぁ……それはできなかったですね。そういうことは、せんとこうと思ってたし……」
――それはなぜなんですか? 「俺は俺だ!」みたいなポリシーから?
ぜん「いやいや、それは……そういう気持ちも少しはあったんでしょうが、それよりも僕、謙虚なんですよ。よく『あいつ天狗や』って言われるけど、ぜんぜん。本当にものすご謙虚なんですよ。自分の武器がまだないのに、コレっちゅうものも持ってないのに、すり寄っていっても相手に迷惑なんとちゃうかな、と。自分がどっかのファミリーに入って、どう機能するか、それを頭のなかでシミュレーションしてしまうんです。それで、『あぁ、やっぱり、ないな』と。先へ先へ考えてしまう。そういう計算というか硬さが、かわいくないんでしょうね」
■ いまはまだ、旅の途中
――ご自身でもおっしゃってますが、ぜんじろうさんの“コレっちゅう武器”って、見えにくいですよね。どういうことを得意とするタレントなんだろう、と。
ぜん「形がないんですよね。落語家でもない、漫才師でもない。ネタをやる漫談家でもない」
――ご自身では、自分は何だと捉えていらっしゃるのでしょうか。
ぜん「“ぜんじろうというジャンル”になりたいんです。それを作ろうとして、あがいてるんですよ、いま。やりたいことは大きいんです。例えば北極に行って、その経験をおもしろおかしく話す。それって、やろうと思ったら誰でもできるじゃないですか。でもそうじゃなくて、日常生活のなかの北極って、あると思うんです。“日常の北極”って、あると思うんです。日常生活のなかの、かすかなキチガイじみたこと。そこを見つけるのが一番おもしろいと思うんですよ。それを伝えたいんですよ」
――日常の北極! 胸打たれました。それは凄くいい言葉ですね。パクらせてほしいくらい(笑)。でもタレントとして、正直、決してキャッチーじゃないですよね。
ぜん「そこなんですよね。それをどう伝えるか、まだ見つかってないんですよ。“旅の途中”なんですよ」
――

なるほどね。でも、その「見つからなさ」に凄いシンパシーを抱いてしまうんですよ。それを見つけられる人は、本当に少ないです……。では次回から、ぜんじろうさんの激しいにもほどがある強烈なアップダウン芸人人生を顧みつつ、未来のぜんじろう像を結んでゆきたいと思います。キツイ質問も容赦なくするかと思いますが、よろしくお願いします。

  
 註:『テレビのツボ』……毎日放送制作。1992年10月スタートした超低予算ローカル帯番組。各局その日の面白かった番組のツボをイラストフリップで紹介するチープな内容ながら、深夜にも関わらず10%を突破する高視聴率番組となった。「2チャンネル君」を担当したのが、のちの藤井隆。
  
 
TEXT■吉村智樹 撮影・協力■零まどか 鈴々舎南風
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