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2007年2月26日(月)

第18回 「手作り子供」作ろう『団地ともお』

さてはて、最後の更新でございます。
ラストを飾る漫画は……ダララララララ(ドラの音)、ジャン! 『団地ともお』です。

以前、「激談!ひとりごと…」にてミジンコさんがリクエストしてくださった作品ですね。今更&及ばずながらではありますが、それにお応えして当連載を締めさせていただこうかと思います。どうぞ、しばしのお付き合いをば。


小田扉にはじめて出会ったのは「QuickJapan」。2002年に連載された『ブリトビラロマンSF』が初見でした。が、当時はピンと来ず。「これはすげぇ!」とうなったのは、友達から『○被警察24時』を借りたときでした。のらりくらりと読者を惑わすテクニックに、脱力しながら脱帽したものです。

ところがそれからタイミングが合わずというか日々に追われてというか、小田扉漫画に親しまず時が過ぎ行き、改めて再会するのは実に数年後。2007年の本日でありました。ミジンコさんのリクエストがあったから手に取れたのですよ。あ〜、ありがて〜。



『団地ともお』は、枝島団地29号棟に住む小学4年生、木下ともおが主人公の物語です。ともおとその家族、そのクラスメイト、上級生、下級生、先生、校長、団地の住民、高校生……と、ともおを中心とした、あるいは外野とした出来事を描いた日常漫画です。
男の子版『ちびまる子ちゃん』と言えばわかりやすいですが、じわりと迫りくる空気の濃度はダンチ(団地と段違いをかけたステキなギャグ)。
笑いの生み方はシュール卑近。物語の落とし方は冷めてるようでしんみり過剰に走らないが、地味だけでは終わらない。微っ妙〜な、それこを小田ワールドとしか言いようのない世界を展開。つるりと心の隙を突くのです。釣り上げた魚のバケツをひっくり返すみたく。

コマの密度がまた、薄いよーで濃い〜のだ。
線はヒョロヒョロ頼りないのに、情報量がたっぷり。現実と同じ瞬間が流れる紙。いかにも「漫画」な「記号だけのコマ」が、ないんですね。キャラはセリフを吐くだけの道具にあらず!

例えば1巻の11ページは、夏休みの朝に起きたともおが、母から500円をもらって出かける姉を目撃し憤慨する場面。目撃してから「姉ちゃん金もらってた!!」と非難するまでの間に、何気なくブラシで髪をとき(4コマ目)、寝癖(2コマ目)を直す(6コマ目)そつのないともお。この一連の情報は物語にまったく関係ありません。
例えば1巻22・23ページは、夏休みの予定表をつくるともおと吉本の思考が、円グラフ→丸型蛍光灯→PSソフトと、スムーズに遊びに変換される行程が描かれています。連想ゲームで。
例えば1巻74ページの最後のコマの、こわい島田さんから逃げてきたともおと吉本の場面。「何やっても島田さん怒るよなー。」と言いながらの水浴びは、無駄にリアルな夏
例えば1巻87ページの穴埋めの落書きは、うなだれる髪の長い少女ふたりで、79ページ5コマ目のふたりの髪が伸びた姿だったり。
この、一連の情報は物語にまったく関係ありません。(2度目)
が、それらの無意味なオンパレードが読者をクスリとさせる。ツボをぐいぐい押してくる。むしろ、それらが小田ワールドのメインディッシュと言わんばかりに。鋭い日常へのメスと、不条理。その両天秤にアタシ達はやられるのだ。

ともおの父は単身赴任で、ともおは基本的に父の不在をさみしく思っています。いつもバカばかりやってるともおですが、父親との話ではかわいく見えちゃうのも憎い。普段はムカつくガキの、意外なかよわい一面ってもう、コロリ。
父親の顔が描かれないのもオモロイですね。どのコマでも後姿や陰でトップシークレットなフェイス。まるで足長おじさんのような存在感。これがまた、作品に不思議な深みを与えているんです。隠す必要もねぇのに!

(劇中劇の『スポーツ大佐』もイイ味です。ともおが読んでる漫画だからって、遠慮のなさすぎるシュール。小田扉の中の「吉田戦車メソッド」が炸裂してる感じです)

また、ネタばかりでなく感動をも味わわせてくれるのが、『ともお』のスゴイところ。
「今、オレの目の前で食ってくれ……!」「親父は俺達にこの世界を遺してくれたんだぜ!! こんなのつかいきれないよなぁ!!」「その『なんとなく』に救われた… この気まぐれ天使め!!」なんてセリフは、思わずじ〜んときちゃいましたよ。もちろんストーリー込みで響くセリフですので、未見の方は読むべし読むべし。

小ネタ探しというゲームと、ふいに襲ってくる感動
この「アメとムチ」にハマれば、誰もが小田ワールドのトリコに。病みつきになること間違いなしです。


絶賛連載中の『団地ともお』は、1話完結形式です。ともおは小学4年生のまま成長しません。
『ちびまる子ちゃん』や『サザエさん』を見ればその形式は当然ですが、小田扉がそれを選んだのは、やはり彼が読み切りの人だからではないでしょうか。

何を隠そう、アタシは短編集『そっと好かれる』『男ロワイヤル』収録の女トリオ物語の方が、『ともお』より好きなのだった。小田扉の真骨頂だと思っています。



クラスメイトの角山君に恋をし、ひたすら母を待ちながらひとり暮らしをする女子高生の古野さん。課長の好みの女になるため、下の歯で上の歯を押さえ常にギリギリむき歯で出っ歯矯正をしているOLの野木さん。アタッチメントの高枝切りバサミと共に生活する失恋女、釣りは必ず邪魔する高枝さん。3人が繰り広げる、めくるめく女のパッションが静かに熱い!

3人は同じアパートに住んでいます。この連作をまとめて名付けるなら、『アパート古野』とでもなるんでしょうか。『団地』に倣うなら。
『団地ともお』といい『江豆町-ブリトビラロマンSF』といい、小田扉は〈ひとつの町で起こる人間模様〉というテーマが好きなようですね。
これは、作者のフェイバリットだという『ジョジョの奇妙な冒険』の影響でしょうか。町民の関係の築き方は双方とも絶品。アタシも好きだよ〜、4部。

『アパート古野(仮)』は、ネジの外れた女3人の挙動が魅力満点。且つ、侘しくてたまらん作品です。この生々しさ、躍動感!
小編『私のおじさんの含み笑い』『ともみの親友』も、無気力ながら良作です。
女主人公の物語の方が輝いて見えちゃうのは、アタシが女だからでしょうか。いや、シュールは女子によってこそ開花するからではないかしらん? 不思議ちゃんって魅惑的だもん、男にとっても女にとっても。
これからも小田扉ガールに心わしづかみな予定のアタシであります。もちろん、ともおもね。


――てなわけで以上、ゆるゆる小田扉レビューでした。最後もやっぱり、ぬるい締め。

かれこれ4ヶ月という短い期間でありましたが、お付き合いくださりありがとうございました。「ミミィ&カッキー」で連載できたのは大変幸福でありましたよ。

改めて編集長、うどん様。
漫画にくわしくもない粗忽者に場を貸していただき、ありがとうございました。言葉をかけてくださったメンバー様、ユーザー様にも感謝の気持ちでイッパイです。
漫画情報源としてもミミカキは重宝してました。狐蓋。さんのひとりごと『トトの世界』『大阪ハムレット』も気になって手を出したり。みなさん、趣味がいいからありがたかったわ〜。

さて、3月から「きなこ餅コミック」は、ブログに形を変えて再スタートいたします。お引っ越し先はこちら。ミミカキの日、3/3オープン予定地であります。
今後の更新はニュー掲示板でお知らせさせていただきますね。また感想いただけると、ゆすらは喜んでジャンピングスクワットいたします。これからも何卒、変わらぬご愛顧の程をば。

さようなら、そしてありがとう、しらゆり荘!


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